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サーフィン・小笠原|日本ロングボード紀行

海に囲まれた日本列島には、日々、大海原からうねりが押し寄せる。豊かな海岸線、峻嶺な山々から注ぐ大河に恵まれ、さまざまな波を生み出している。四季折々、津々浦々で、今この瞬間も波が生まれては消えていく。そこには、その波をこよなく愛し、守り、慈しむサーファー達の姿がある。そう、日本は世界に誇るサーフアイランドなのだ。

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この連載では、ロングボードを切り口に、各地のサーファーコミュニティと彼らの地元の波への思いを伝えていきたい。今回、足を運んだのは、ユネスコ世界自然遺産・小笠原。果たして、どんなサーファーと波が待っているだろうか?

大自然を前にして「サーファーが波を選ぶ」は通用しない!

午前11時、東京竹芝桟橋から小笠原丸に乗船する。これ以外ここに行く手段はない。一番気になるのは「どんな波があるのか?」、ネット検索すると「ポイントまで歩いてものすごく遠い、超浅いリーフ、フラット、連日オンショア、コンビニがない、船は片道24時間・週一便のみ」と呟かれている。出航4時間後、携帯電話が圏外になり果てしなく不安に駆られる。

▲ここにしか生息しない絶滅危険保存種の宝庫だ。一度失ったら二度と元に戻れない地球の繊細さを実感できる

▲初代サーファーは現役最前線で、若手に至るまでちゃんとサーフィンの美学と哲学が伝承されている

▲クジラは人類が進歩しても追いつけないコミュニケーション能力を備えている。小笠原の元祖ローカル

北緯35度から27度まで南下すると亜熱帯だ。「いざ! 波乗りに…」。この大自然の中で「サーファーが波を選ぶ」が通用しないことを悟る。波が人を選ぶ。「クルマを停め窓から波チェックしてサクッと一ラウンド」など到底あり得ない。ちっともロングボード紀行じゃないじゃん? 第一ロングボードは乗船日以前に芝浦埠頭の「小笠原海運」に持ち込まないと運べない。長い船旅、やっと取得した休暇、最低でも1週間は戻れない、そんな困難を乗り越えた者だけがエデンの園に辿り着ける。

▲サーフポイントまでのアクセスは良好とはいえない。仲間だけで波を満喫することも珍しくない

▲南の島らしいパワフルな波もお目みえする小笠原。島のサーファーのレベルも高い

▲青い海に青い空。そしてさんさんと注ぐ太陽の光。仲間とともに波をシェアする。これ以上望むものはあるだろうか

東京から南へ1000キロ、西へ130キロの西ノ島は今も噴火を続け大きくなり続けている。小笠原の島々はハワイ諸島と同じく大陸から分離した地でなく、火山が創り出す地球の核心(コア)と直結する神が宿る一点である。この特殊な環境が、沖で波を待ちながら自分自身が海と対峙していると気付かせる。

▲欧米系島民を中心に信仰を集める小笠原聖ジョージ教会。1909年に創立と長い歴史を持つ

小笠原の最大の魅力は「人」

遠回しになったが結論から言えば波はある。島民は2000人強、その半分は自衛官を含めた役人で日本防人の島だからだ。海岸線と山中には今も人の匂いが充満するトウチカが点在、300キロ南に行けば第2次世界大戦で最大の攻防が繰り広げられた硫黄島だ。純粋な島民約1000人のうち100人が波乗りに親しむ。ビーチブレークからリトルリバーマウス、玉石、コーラルリーフと多彩だ。島民の自然環境保護意識の高さは日本が世界に誇れる。その証拠にユネスコの世界自然遺産に登録された。2011年、東日本大震災の年である。漂流物を黙々と「ゴミは拾うもの、捨てるものではありません」と行動する。レインボーバーレイと呼ばれるエリアにはクオリティー・オブ・ライフを実践する人たちが暮らす。川沿いの「USKコーヒー」では地元産の美味しい一杯が頂ける。

▲亜熱帯植物で緑豊かな森には、コーヒーも自生している。手摘みのコーヒーの味は最高だ

帰路、乗船すると週に一度の見送りがたくさんの人が集まり「いってらっしゃーい!」と叫んでいる。「さようなら」ではない。帰路に就く大型客船を釣り船やクルーズ船が追っかけ、両手を振る人たちは碧い海に飛び込む。「よくある観光的おもてなし行事」が度を越したのでは? と思いきや、ほんの数日を共に過ごしたゲストに皆本気になっている。だから何度訪れても涙が溢れる。悲しいからではなく魂が揺さぶられるからだ。行きの船でトゲトゲしかった人も、帰りの船では笑顔輝く良い人に変貌している、きっと自分もその一人なんだろう!

▲小笠原の最大の魅力は? 大部分の人は、海・森・自然と答えるだろうけど、僕は「人」だと思う

▲サンセットタイムは神聖なひととき、沈む夕日は希望に満ち溢れている。地球の自転を体感しよう

肌を焦がす太陽光線、恐怖の豪雨、危険な台風、どんな環境でも「ここに自分が今いること」が嬉しくてしょうがない。たった24時間先に楽園があるなんて、なんて素晴らしいのだろうか! 人生に悩んだら、疲れたら…。島に行けば全て解決する。ワックスは島唯一のサーフショップ「ラオ」で現地調達するべきだ。もし誰もいなければ木箱にお金を入れて下さい。レンタカーの鍵は付けっ放しにしておけば失くす心配なくサーフィンできます。人間が失いつつある本能と優しさを取り戻せる場所、それが小笠原だ。僕は「地上最後で最高の楽園」と呼ぶ。ちなみにここは東京都である。

 

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NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

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